白内障・Clinique Sainte-Geneviève(パリ14区)
Clinique Sainte-Geneviève(パリ14区)での白内障手術
白内障の手術は、そのすべてをパリ14区の Clinique Sainte-Genevièveで行っています。このページでは、手術までの流れをひととおりご説明します。施設の手術設備、書類の準備、麻酔科の診察、手術前の準備、当日の進み方、手術後の経過、arrêt de travail(フランスの休業証明書)と bon de transport(フランスの、通院にかかる移送費用の証明書)、危険、費用についてです。まず病気そのものと症状をお知りになりたい方は、白内障の総合ページをご覧ください。
なぜ Clinique Sainte-Geneviève(パリ14区)なのか
Clinique Sainte-Geneviève は、日帰り手術を専門とする施設です。所在地は 29 rue Sarrette, 75014 Paris で、眼科手術のための設備をそなえています。超音波水晶体乳化吸引術に対応した手術室、短時間の回復室、待ち時間の少ない日帰り手術の動線が整っています。
この施設が1年に手がける眼科手術の件数と、白内障手術に慣れた麻酔科のチームがそろっていることが、安全で、見通しのよい環境につながっています。パリ14区という場所柄、パリ南部・西部から、またヴァル=ド=マルヌ県からも、メトロ6号線(Denfert-Rochereau)とRER B線(Port-Royal)で通いやすい立地です。
押さえておきたいこと
手術は日帰りです。その日のうちに入り、その日のうちにお帰りいただきます。手術そのものにかかる時間はおよそ15〜30分で、半日のうちにご自宅へ戻れます。
超音波水晶体乳化吸引術:標準となる術式
用いる術式は超音波水晶体乳化吸引術で、25年以上にわたり世界の標準となっている方法です。ごく細いチップから伝える超音波で、濁った水晶体を細かく砕き、その断片を吸い出します。用いるのは、自然にふさがる2.2mmの極小切開です。続いて、折りたたんだやわらかい眼内レンズをもともとの水晶体嚢のなかへ入れると、レンズはそこで広がり、長く安定した位置に収まります。
手術は局所麻酔で行います。麻酔の点眼を繰り返しさし、楽に過ごしていただくために軽い鎮静を併せます。大多数の場合、全身麻酔は行いません。意識は保たれたまま、緊張のとれた状態で、痛みも器具が触れる感覚もなく、感じるのは顕微鏡の光だけです。
手術の書類の準備
方針を決める診察から手術当日までのあいだに、私のアシスタントが手術の書類をそろえます。お読みいただき、署名して、保管していただく書類は次の3種類です。
- お見積もり(devis):手術、麻酔、クリニックの費用と、プレミアム眼内レンズをお選びの場合の自己負担額を、項目ごとに記した書面です。お決めいただく前に、費用を包み隠さずお示しします。金額の目安は白内障の費用のページにまとめています。
- SFOの説明文書:フランス眼科学会(Société Française d’Ophtalmologie)が作成した説明文書で、フランスにおける白内障手術の標準的な同意文書にあたります。手術の内容、期待できる効果、危険、ほかにとりうる方法が書かれています。手術の前に、よくお読みいただいたうえで署名していただく必要があります。
- 処方せん:手術前の処方せん(手術当日の朝にさしていただく散瞳の点眼薬。手順は書面でお渡しします)と、手術後の処方せん(感染を防ぐ抗菌薬、目の炎症の反応を抑える抗炎症薬、そして手術そのものや事前の消毒によって乾いた感じがある場合の人工涙液)です。
これらの書類について、ご不明な点はアシスタントに直接おたずねいただくか、診察のときにあらためてご質問ください。分からないまま帰られるより、その場ではっきりさせておくほうがずっとよいと考えています。
クリニックで受ける、手術前の麻酔科の診察
フランスの法令(décret n° 94-1050)により、予定して行う手術の前には麻酔科の診察が必ず必要です。白内障手術については、この診察をClinique Sainte-Genevièveで、施設の麻酔科医が、手術より前の時期(多くは数週間前)に行います。
この診察で、麻酔科医は次のことを行います。
- これまでの病気、アレルギー、現在お使いの薬(とくに抗凝固薬、抗血小板薬、β遮断薬の点眼)をうかがいます。
- 併せもつ病気(心臓・血管、呼吸器、糖尿病)と、手術の姿勢がとれるかどうかを確かめます。
- いちばん適した麻酔の方法を決めます。局所麻酔(点眼)に、楽に過ごしていただくための軽い鎮静を併せる方法です。
- 手術に向けて、麻酔を受けられる状態かどうかを確認します。
実際的なご注意:この麻酔科の診察でクリニックへ向かう移動は、ご自身の手段でお願いします。診療所が発行する bon de transport(移送費用の証明書)は、手術より前のこの移動を対象としていません(arrêt de travail と bon de transportの項をご覧ください)。
手術の前に:準備
手術の数日前に、くわしい注意事項をお渡しします。
- 散瞳の点眼薬をさすこと。手術当日の朝に、アシスタントからお渡しした手術前の処方せんのとおりにさしてください。多くの場合、クリニックへ出発する前に、10分おきに3回さします。
- ふだんのお薬を飲むこと。循環器の主治医の了解があれば、抗凝固薬も含みます(局所麻酔で行う白内障手術では、通常、抗凝固薬を中止しません)。この点は麻酔科の診察で確かめます。
- 手術前の絶食を守ること。麻酔科医の指示にしたがってください。局所麻酔に軽い鎮静を併せるため、絶食の時間や時刻は麻酔科の診察のときにお伝えします。かならずお守りください。
- 付き添いの方とご一緒にお越しください。お帰りのためです。手術後の数時間は見え方がぼやけますので、当日の運転は避けてください。
- ふだんどおりの清潔:いつものように入浴していただき、当日の朝は目のまわりの化粧をせず、コンタクトレンズをお使いの方は外してお越しください。
- お持ちいただくもの:carte Vitale(フランスの公的医療保険の保険証)、mutuelle(フランスの民間補完医療保険)の保険証、署名済みのお見積もり、署名済みのSFO説明文書、処方せん、身分証明書。
これに先立って行う検査(生体計測、角膜形状解析、黄斑部OCT)のくわしい内容は、白内障の術前検査のページでご説明しています。

手術当日:時間を追って
- クリニックへの到着:手術の1〜2時間前です。受付の手続きのあと、病室または日帰り手術用のブースにご案内します。
- 準備:お名前、手術する側の目、署名済みの書類を確かめます。必要に応じて、看護スタッフが散瞳の点眼を追加します。
- 手術室での準備:手術台に横になっていただきます。薄めたポビドンヨード(Bétadine)で手術部位を消毒し、清潔な覆布をかけ、まぶたに小さな開瞼器をかけます。ご自身で目を開け続ける必要はありません。
- 局所麻酔:麻酔の点眼を繰り返しさし、楽に過ごしていただくために軽い鎮静を併せます。数分で目の感覚はなくなります。
- 手術そのもの:極小切開、前嚢切開(水晶体嚢の前面を円形に切り開くこと)、超音波水晶体乳化吸引、吸引、眼内レンズの挿入です。所要時間は15〜30分です。
- 手術直後:手術した目に保護カップを当てます。病室に戻り、軽いお食事をとり、血圧を確かめます。
- ご帰宅:受付からおよそ2〜3時間後に、付き添いの方とご一緒にお帰りいただきます。
手術にはどのくらい時間がかかりますか
手術室での手術そのものにかかる時間(最初の切開から、最後に保護カップを当てるまで)は、片眼あたりおよそ15〜30分です。この時間は、水晶体の硬さ(かなり進んだ白内障では、超音波を使う時間がやや長くなることがあります)、入れる眼内レンズの種類(トーリックレンズでは、水晶体嚢のなかで正確に向きを合わせる必要があります)、目の解剖学的な特徴によって変わります。
一方、クリニックにいらっしゃる時間の合計(到着からお帰りまで)は2〜4時間です。受付、準備、手術、手術直後の経過観察、退院の書類の受け取りを含みます。

はじめの24時間
クリニックを出るときから、手術した目に保護カップを当てていただき、最初の夜のあいだは着けたままにします。見え方はぼやけ、乳白色の膜がかかったように感じられることもあり、光をまぶしく感じます。砂が入ったような感じや涙が出ることは、器具が結膜を通ったことによるもので、ふつうのことです。
ご自宅では、手術後の処方せんの点眼薬を始めていただきます。抗菌薬(感染を防ぐため)、ステロイド性または非ステロイド性の抗炎症薬(むくみと炎症の反応を抑えるため)、そして乾いた感じがある場合の人工涙液(手術そのものによる場合も、手術部位の準備に用いる Bétadine による消毒によって起こる場合もあります)です。
痛みがあっても、通常はアセトアミノフェンなどの一般的な鎮痛薬で十分に和らぎます。大多数の場合、痛みはほとんどありません。この手術が受け入れられやすい理由のひとつです。
手術後の経過:術後2日目の診療所での診察
手術から2日後に、カシャンの診療所(ご予約によってはパリ13区の診療所)で、術後2日目の確認の診察を受けていただきます。眼圧を測り、眼内レンズが正しい位置にあることを確かめ、異常な炎症がないかを診ます。このときに保護カップを外せます。
点眼薬は、お渡しした予定表のとおりに続けてください(およそ4週間かけて少しずつ回数を減らします)。特別な指示がないかぎり、次の診察は1か月後、そして1年後に予定します。してよいこと、避けたいこと、仕事への復帰、スポーツ、運転についてのくわしいご案内は、白内障手術後の経過のページにあります。
arrêt de travail と bon de transport
白内障の手術は医学的に必要な手術であるため、次の証明書を受け取ることができます。
- arrêt de travail(フランスの休業証明書):お仕事の内容に合わせて発行できます。デスクワーク(事務、画面に向かう仕事)であれば3〜7日が目安で、ほこり、振動、化学物質にさらされる場合や、強い力仕事の場合には、それより長くなることがあります。期間は診察のなかで相談し、お一人おひとりに合わせて決めます。屈折矯正手術(レーシック、PRK、ICL、SMILE)はご希望で受ける手術であり、フランス社会保障法典 L.323-1条にいう arrêt de travail の対象になりませんが、白内障の手術は保険で給付され、休業補償の対象となる手術です。
- bon de transport(フランスの、通院にかかる移送費用の証明書):手術当日についてのみ発行します。手術の日の、ご自宅と Clinique Sainte-Geneviève とのあいだの往復が対象です。手術後の診察(術後2日目の診療所での診察、1か月後、そして1年後)や、クリニックで受ける術前の麻酔科の診察は対象になりません。これらにはご自身の手段(ご家族の車、公共交通機関、自費のタクシー)でお越しいただきます。
書類の手続きについて
私のアシスタントが、書類一式をあらかじめ用意します。お見積もり、SFOの説明文書、手術前と手術後の処方せん、そして対象となる場合は arrêt de travail と bon de transport です。手術を決めてから当日までのあいだ、書類に関するご質問はいつでもアシスタントにおたずねください。
危険と合併症:包み隠さずお伝えします
どのような手術にも言えることですが、超音波水晶体乳化吸引術にも危険があり、お決めになる前に知っておいていただくことが欠かせません。その大半はまれであるか、一時的なものですが、正しくお伝えする務めとして、診察では必ずご説明しています。
- 眼内炎:目のなかの重い感染で、最も恐れられる合併症です。前房内への予防的な抗菌薬投与と、清潔操作の手順が整った現在、超音波水晶体乳化吸引術での発生は1,000件に1件未満と見積もられています。手術後はじめの数日のうちに起こり、痛み、急な視力の低下、目の充血として現れます。ただちに受診が必要です。
- 嚢胞様黄斑浮腫(Irvine-Gass症候群):黄斑に起こる炎症の反応で、手術から数週間のうちに視力が下がることがあります。発生はおよそ1〜2%です。多くは、点眼と飲み薬の抗炎症薬で軽快します。
- 手術後の網膜剥離:まれな合併症です(1%未満)。強度近視の方に多くみられます。急いで手術による治療が必要です。
- 手術中の水晶体嚢の破損:手術室で対処する技術上の合併症で、眼内レンズの種類や、入れる位置を変えることがあります。
- 後発白内障(水晶体嚢の後ろ側が濁ること):手術から3年のあいだに、およそ20%の患者さんに起こります。YAGレーザーによる簡単な治療で、多くの場合、無理なく受けていただけます。後発白内障:YAGレーザーをご覧ください。
- 残る屈折の誤差:手術のあとも、わずかな度数の矯正が必要になることがあります。とくに、単焦点レンズをお選びの場合の読書用の眼鏡がこれにあたります(ふつうのことで、あらかじめ見込まれている状態です)。
費用と保険給付
手術と標準的な単焦点レンズは、Assurance Maladie(フランスの公的医療保険)と、国の基準を満たす契約(contrat responsable)の mutuelle(フランスの民間補完医療保険)が全額を負担します。手術、麻酔、クリニックの費用、経過を診る診察が含まれます。dépassement d’honoraires(保険の基準額を超える医師の追加料金)がかかるかどうかは、医師が属する診療報酬の区分と、ご契約の mutuelle の内容によって変わります。
自己負担が生じるのは、プレミアム眼内レンズ(トーリック、EDOF、多焦点)をお選びになる場合だけです。上乗せされるレンズの費用は Sécurité sociale(フランスの社会保障制度)の給付対象ではなく、一部の mutuelle では部分的に補償されます。くわしい金額はすべて白内障の費用のページにまとめています。Sécurité sociale が定める算定基準額、かかりうる dépassement d’honoraires、EDOFレンズ・多焦点レンズ・トーリックレンズそれぞれの費用、そして糖尿病に伴う白内障のような個別の場合についても、そちらでご説明しています。
重要な数値
フランスでは、白内障の手術が年間80万件を超えて行われています。近年のヨーロッパの登録データでは、手術から1か月の時点で、見え方に満足していると答えた患者さんは95%を超えると報告されています。
手術についてよくあるご質問
手術のご予約
方針を決める診察は、カシャンまたはパリ13区の診療所で行います。日帰りの手術は Clinique Sainte-Geneviève(パリ14区)で行い、そのあと術後2日目に診療所で確認の診察を受けていただきます。
参考文献
- Pershing S, Lum F, Hsu S, et al. Endophthalmitis after cataract surgery in the United States: a report from the Intelligent Research in Sight Registry, 2013-2017(米国における白内障手術後の眼内炎:Intelligent Research in Sight レジストリからの報告、2013〜2017年). Ophthalmology. 2020;127(2):151-158. PMID 31611015.
- Chu CJ, Johnston RL, Buscombe C, Sallam AB, Mohamed Q, Yang YC. Risk factors and incidence of macular edema after cataract surgery: a database study of 81 984 eyes(白内障手術後の黄斑浮腫の危険因子と発生率:81,984眼のデータベース研究). Ophthalmology. 2016;123(2):316-323. PMID 26681390. 超音波水晶体乳化吸引術後の嚢胞様黄斑浮腫の発生率と危険因子。
- Lundström M, Dickman M, Henry Y, et al. Risk factors for refractive error after cataract surgery: Analysis of 282 811 cataract extractions reported to the European Registry of Quality Outcomes for Cataract and Refractive Surgery(白内障手術後の屈折誤差の危険因子:白内障・屈折矯正手術の質に関するヨーロッパ登録に報告された282,811件の白内障手術の解析). J Cataract Refract Surg. 2018;44(4):447-452. PMID 29685779.
- Haute Autorité de Santé(フランス高等保健機構). Chirurgie de la cataracte chez l’adulte : recommandations de bonne pratique(成人の白内障手術:診療ガイドライン). HAS, 2018(2024年改訂).
本ページは、Clinique Sainte-Geneviève で行っている標準的な流れについてご説明したものです。手術はお一人おひとりの検査結果に合わせて計画し、手術前の診察で十分にご相談のうえ決めます。