まぶた — よくみられる病気

霰粒腫(さんりゅうしゅ):治療、切開、そして再発の予防

霰粒腫は、マイボーム腺がつまることでまぶたにできる、炎症をともなう嚢胞です。よくみられ、心配のいらないものです。自然に引く場合から、診療所で行う切開・掻爬(そうは)まで、治療の流れをむずかしい言葉を使わずにご説明します。

霰粒腫とは何か:まぶたの構造と、できる仕組み

まぶたの厚みのなかには、マイボーム腺が2列に並んでいます。片方のまぶたに、およそ25〜40個あります。この腺は涙液層の油の層を分泌し、涙が蒸発するのを防ぎ、まばたきのたびに目の表面を潤しています。この腺の出口がつまると ― 皮脂が濃くなる、まぶたのふちに炎症が起こる、弱い感染が長く続く、といったことが原因です ― 腺のなかに脂が溜まっていきます。

この溜まりが肉芽腫性の反応を引き起こします。免疫の細胞(組織球、形質細胞)が脂の内容物を取り囲むように並び、線維性の殻をつくるのです。この、袋に包まれた、触れると硬く、痛みの少ない嚢胞を霰粒腫と呼びます。ギリシャ語のkhalaza(雹〈ひょう〉)に由来する名です。上まぶたのほうが下まぶたより多く起こりますが、それは単に、上まぶたのほうが腺の数が多いからです。

押さえておきたいこと

霰粒腫は、いま起こっている感染ではなく、細菌のいない炎症の反応です。ですから抗菌薬だけでは消えません。 もとから治すには、機械的に出してやること(温罨法、マッサージ)か、手術で中身を出すことが必要になります。

上まぶたと、まぶたのふちを間近に写した目
霰粒腫は、つまったマイボーム腺から、まぶたの厚みのなかにできます。

症状:霰粒腫に気づく

霰粒腫の現れ方には、だいたい決まった順序があります。はじめの数日は、そこが赤くなり、少し痛むことがあり、麦粒腫(ものもらい)と思われることもあります。やがて強い炎症が引き、あとには硬いしこりが残ります。痛みはないか、あってもわずかで、指で触れると動きます。

  • 硬いしこりが、上まぶたまたは下まぶたの皮膚の下に触れます。その上の皮膚とは、くっついていません。
  • 目に見えるふくらみがまぶたの表面に現れ、大きさによっては、形がゆがんで見えることもあります。
  • 結膜の赤みが、まぶたを裏返した内側に見えます。炎症のしるしです。
  • わずかな見えにくさ。霰粒腫が大きくなって角膜を押すと、一時的で変わりやすい乱視が起こることがあります。
  • 目に何か入っているような感じ、またはまぶたの重さ。とくに一日の終わりに感じます。
  • 反射による涙目。結膜の刺激や、あわせて起こるドライアイによるものです。

気をつけたいこと

まぶたのしこりがまったく同じ場所に何度もできる場合、急に大きくなる場合、ひとりでに出血する場合、あるいはその場所のまつげが抜ける場合は、ためらわず診察を受けてください。まれではありますが、まぶたの腫瘍(とくに脂腺癌)が、くり返す霰粒腫とよく似た姿をとることがあります。

原因と、起こりやすくする要因

霰粒腫はどなたにも起こりえますが、次のような場合には、くり返す頻度がはっきり高くなります。

慢性の眼瞼炎と、マイボーム腺機能不全

これが、くり返すいちばんの原因です。眼瞼炎は腺の分泌物を濃くし、つまりをくり返させます。マイボーム腺機能不全(MGD)― 画面を見て過ごす時間の長い方にとても多くみられます。まばたきが減り、腺に分泌物が溜まるためです ― も、同じ仕組みによるものです。霰粒腫をくり返すことは、手当てされていない眼瞼炎が隠れているしるしであることが少なくありません。

酒さと脂漏性皮膚炎

目の酒さには、眼瞼炎とマイボーム腺機能不全がともなうことがとても多くみられます。頭皮や眉の脂漏性皮膚炎も、まぶたの皮脂の成分を変えることで、つまりを起こしやすくします。霰粒腫の頻度を減らすには、これらの皮膚の病気にも、それに合った治療が必要です。

そのほかの、起こりやすくする要因

  • まぶたの清潔が足りないこと。まぶたのふちに、皮脂やふけのような汚れが溜まります。
  • コンタクトレンズを長く使うこと。涙液層のはたらき方が変わります。
  • ホルモンの状態。妊娠中や思春期など、皮脂の分泌が変わる時期があります。
  • ストレスと疲れ。まばたきの回数が減り、涙液層の質が落ちます。
  • 霰粒腫にかかったことがあること。一度弱った腺には、同じ場所にまた起こりやすくなります。

霰粒腫か、麦粒腫か:見分け方

霰粒腫と麦粒腫(ものもらい)は、よく取り違えられます。次の表に、どう対応するかを決めるうえで欠かせない見分けどころをまとめます。

項目霰粒腫麦粒腫(ものもらい)
性質細菌のいない、肉芽腫性の炎症急性の細菌感染(ブドウ球菌)
できる場所まぶたの厚みのなか(マイボーム腺)まぶたのふち(まつげの毛包)
痛みほとんど、またはまったく痛みません(はじめの時期を除きます)痛みがあり、触れると響きます
経過ゆっくり(数週間から数か月)早い(数日)
発熱/リンパ節の腫れありません経過がよくない場合に、みられることがあります
治療温罨法、マッサージ。引かない場合は切開抗菌薬の点眼薬・眼軟膏、温罨法

経過のはじめのうちは、見分けがつきにくいこともあります。手当てされないままの麦粒腫は、感染が治まったあとに霰粒腫を残すことがあります。診察を受ければ診断を確かめられ、見当違いの治療を避けられます。

閉じたまぶたに温罨法をあてているところ
温罨法と、まぶたのふちのマッサージが、はじめに行う治療です。

お薬と手当てによる治療:温罨法とマッサージ

まぶたを湿った熱であたためると、濃くなった分泌物がやわらかくなり、つまりが取れて、自然に引くことがあります。これがはじめに行う治療で、症状が出た数日のうちから始めます。

温罨法のしかた

  • きれいなガーゼをぬるま湯にひたしたもの(または繰り返し使える温熱アイマスク)を、閉じたまぶたにあてます。1日2〜4回、1回あたり5〜10分です。
  • そのすぐあとに、まぶたのふちをやさしくマッサージします。目のほうへ軽く押しあてながら円を描くように動かし、分泌物を腺の出口へ押し出します。
  • まぶた専用の清拭用品(清拭綿または洗浄液)でまぶたのふちを拭き、つまりのもとになる汚れを取り除きます。
  • ほかの治療を考える前に、少なくとも4〜6週間は続けてください。

処方するお薬

細菌による眼瞼炎をともなう場合には、抗菌薬や抗炎症薬の点眼薬・眼軟膏をあわせて処方することがあります。引かない霰粒腫や、場所が難しい霰粒腫には、病変にステロイドを注射することもあります。ただし、袋に包まれた霰粒腫には、切開がもっとも早く、確かな方法です。

診療所で行う切開・掻爬:その流れ

お薬と手当てによる治療をきちんと続けても4〜6週間を過ぎて引かない場合、あるいは大きい、形がゆがむ、見えにくいといった場合には、切開・掻爬がもっとも効き目のある方法です。診療所で行い、入院はいりません。

所要時間

10〜15分

麻酔

まぶたへの注射による局所麻酔

傷あと

外から見える傷あとは残りません(内側から切開します)

その後の診察

点眼薬を処方します。必要に応じて7日目に診察します

場所

カシャン(94)とパリ13区の診療所

日常への戻り方

ほこりなどにさらされない活動なら、すぐに戻れます

処置の4つの段階

  1. 局所麻酔。リドカインをまぶたの厚みのなかに注射して、その部分の感覚をなくします。この注射が処置のなかでいちばん心地よくない瞬間ですが、数秒で終わります。
  2. まぶたを反転させる。霰粒腫鉗子(かんし)をかけてまぶたを裏返し、切開する内側(結膜側)を出します。外からは見えない面です。
  3. 切開と掻爬。嚢胞の真上にあたる結膜に、小さな縦の切開を入れます。中身(固まった脂、炎症でできた残りかす)を、キュレットという器具でかき出します。同じ場所での再発を抑えるため、線維性の殻もあわせてかき取ります。
  4. 処置の終わり。糸で縫う必要はありません。抗菌と抗炎症の眼軟膏をすぐに塗ります。数時間だけ、軽く目をふさぐ保護をあてることがあります。

処置のあとの経過

そのあとの経過は、ふつう穏やかです。

  • まぶたの腫れは24〜48時間のあいだによくみられ、小さな内出血(目立たない血のにじみ)をともなうこともあります。ふつうのことで、一時的なものです。
  • 抗菌と抗炎症の点眼薬または眼軟膏を、5〜7日間処方します。
  • 治りきるまでは目をこすらないようにし、5〜7日間は目のまわりのお化粧を控えてください。
  • 処置そのもので見え方が損なわれることはありません。一時的にかすむ場合は、眼軟膏か、結膜の軽い腫れによるものです。
  • ほこりにさらされない、座って行う活動であれば、すぐに戻れます。

病理検査

霰粒腫をくり返す場合や、いつもと違う様子がある場合(硬さが違う、壊死したように見える、まつげが抜けている)には、取り出した中身を病理検査に出します。この備えによって、脂腺癌 ― まぶたにできるまれな悪性の腫瘍で、くり返す霰粒腫とよく似た姿をとることがあります ― を否定できます。

再発の予防:まぶたの手入れ

眼瞼炎やマイボーム腺機能不全が隠れたまま手当てされていない患者さんでは、再発がよくみられます。まぶたの手入れを規則正しく続けることが、その頻度を減らすうえで、もっとも効き目のある手立てです。

毎日の手入れのすすめ方

  • 。温罨法を5分間、そのあと、まぶたのふちをやさしくマッサージします。まつげの根もとを、専用の清拭綿(低刺激で、香料を含まないもの)で拭きます。
  • 。就寝前に、目のまわりのお化粧をすっかり落とします。落とすのに刺激の強い製品が必要な、ウォータープルーフのマスカラは避けてください。
  • まばたきをせずに画面を見続ける時間を減らすこと。あるいは20-20-20の目安(20分ごとに、6メートル先を20秒間見ます)を取り入れて、まばたきをうながすことです。
  • コンタクトレンズを使っている場合は、衛生上の決まりを守り、つけたまま眠らないでください。

隠れている原因を治す

霰粒腫を何度もくり返す場合、診察では原因を見きわめ、それを治すことが大切になります。慢性の眼瞼炎であれば、原因となる菌に応じて点眼または内服の抗菌薬を用います。目の酒さであれば、皮膚科での治療を行います。マイボーム腺機能不全であれば、診療所で腺の分泌物を押し出す処置(マイボーム腺の開通をはかる処置)や、温熱で圧をかける機器を用います。あわせて起こるドライアイも治療が必要です。まぶたのふちの炎症を長引かせるからです。

どのようなときに眼科を受診すればよいか

小さな霰粒腫がはじめてできただけであれば、かならずしも受診の必要はありませんが、次のような場合にはおすすめします。

  • 毎日の温罨法を続けても、しこりが3〜4週間を過ぎて残っていること。
  • だんだん大きくなること、またはまぶたの形がゆがむこと。
  • 角膜を押して見えにくくなること。
  • 同じ場所に何度もくり返すこと、または霰粒腫がいくつも同時にできること。
  • しこりに強い赤み、広がるような腫れ、発熱をともなうこと(眼窩前部蜂窩織炎の疑い。医療上の救急にあたります)。
  • 診断にご自身で確信がもてないこと。硬く、動かず、痛みのないしこりは、ほかの原因によることもあります。
  • お子さんの場合。お薬と手当てによる治療で足りることが多いのですが、切開を行うかどうかは、小児眼科の専門医が判断すべきです。

よくあるご質問

いいえ。霰粒腫は、ほとんどの場合、心配のいらない病変です。目が見えなくなることはありませんが、とても大きくなって角膜を押す場合には、一時的な乱視が起こることがあります。いつもと違う様子がある場合や、つねにまったく同じ場所にくり返す場合は、まれな原因、とくにまぶたの脂腺癌を否定するため、専門医の診察を受けてください。

ふつうは、お薬と手当てによる治療(毎日の温罨法、マッサージ)を4〜6週間続けてから、切開を検討します。はじめから大きい場合、見えにくさが強い場合、きちんと続けても引かない場合には、それより早く判断することもあります。眼窩のまわりに感染が広がった場合を除き、急ぐ必要はありません。

局所麻酔が効いてしまえば、処置そのものに痛みはありません。まぶたへの麻酔の注射では、数秒間、軽く焼けるような感じがありますが、そのあと、その部分の感覚はなくなります。大人の方では、よく耐えられます。処置のあとは、24〜48時間のあいだ、軽いわずらわしさと腫れがふつうにみられ、必要であれば第1段階の鎮痛薬(市販の解熱鎮痛薬にあたるもの)で和らげられます。

いいえ。切開は、まぶたを裏返した内側(結膜側)から行い、皮膚は切りません。ですから傷あとは外から見えません。結膜の側では、粘膜が早く治り、目に見える跡は残りません。はじめの24時間にまぶたの小さな内出血が現れることがありますが、数日でひとりでに消えます。

座って行う仕事(事務、在宅勤務)であれば、翌日から、腫れがわずかならその日の夕方から戻れます。当日の運転はお控えください。処置のすぐあとに塗る眼軟膏のために、一時的に見え方に膜がかかることがあるためです。翌日には、見え方がはっきりしていて腫れも軽ければ、ふつうは運転できます。

はい。切開は、いまある嚢胞を治しますが、隠れている原因(眼瞼炎、マイボーム腺機能不全)をなくすわけではありません。腺がまたつまれば、同じ場所に再発することがあります。ですから、まぶたの手入れ(温罨法、マッサージ、まつげの根もとの清拭)を長く続けていただくことをおすすめします。とくに、再発をくり返す方には大切です。まったく同じ場所に何度もくり返す場合は、かならず病理検査に出します。

眼科の診察は、通常の条件で給付の対象となります(かかりつけ医を届け出ている場合、または専門医に直接かかる場合)。診療所で行う霰粒腫の切開・掻爬は、診療報酬の点数が定められており、Assurance Maladie(公的医療保険)の給付の対象です。ご自身の負担がいくら残るかは、補足の医療保険(mutuelle、ミュチュエル)と、医師が属する診療報酬の区分によって変わります。処置のあとに処方する点眼薬も、処方せんがあれば給付の対象となります。

はじめに行う治療では、1日に何度かの温罨法、まぶたのやさしいマッサージ、そして規則正しいまぶたの手入れを組み合わせ、つまった腺から中身が出るのを助けます。こうした手当てを続けても霰粒腫が引かない場合には、診療所での切開・掻爬をご提案することがあります。

診察 & 切開

霰粒腫の診察を予約する

カシャン(94)とパリ13区の診療所で、診断、お薬による治療、切開・掻爬を行います。入院はいらず、日常にも早く戻れます。

参考文献

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本ページは情報提供を目的としており、眼科の診察に代わるものではありません。お一人おひとりの状況は異なりますので、担当の眼科医との診察のなかでご相談ください。